人のいない教室はきっと一人だったら怖くてすぐに帰るだろう。
でも春斗がいるというだけで教室も明るく見えた。
「後夜祭、行かねーの?」
 春斗は遠くを見つめていた目を私に向けた。
前髪を切った春斗の目は力強くて、澄んだ瞳だった。
観察を始めそうになるが、グッとこらえて私も春斗の目を会話の内容として見た。
「実はさ、人が多いところダメなんだよね。去年は一人だったから行かなかったし」
 春斗は何も言わずに頷く。
それは「わかる」という同感でもなく、「それくらい」という否定でもない。
苦手なものが人にはあるとしっかり判断して行動する春斗は見習いたいと思う。