消毒の匂いが微かにする保健室。
ここはいつ来ても温かい。
それは気候や室内温度とは関係ない心を落ち着かせる温かさだ。
簡単に言えば、私が最近感じる温もりというものだと思う。
杏夏が熱を測っている間、私は杏夏に症状を聞きながら来室カードを書いた。
来室カードは期間、症状、就寝時間と起床時間と、丁寧に詳しく印字されている。
体温計がなって養護の先生が杏夏から体温計を取り出すとわかるほどに口を強く結んで難しい顔をした。
「熱やっぱりあるね。就寝時間考えると疲れかもしれないね」
 淡々と書いていて気づかなかったが杏夏は夜中の三時半に寝たらしい。
最近忙しそうにしていた杏夏が疲れてしまうのも無理はない。
「とりあえず今日は帰る?」
 先生の言葉にうつむいて悲しげな瞳を見せる杏夏の手をとって私はしゃがんだ。
「今度、三人でどっか行こう。今日の埋め合わせで」
 昔は励まされる相手も励ます相手もいなかった。
自分が励ますなんて考えていなかった。
でも私の励ましで杏夏の笑顔が戻るならいくらでも励まそうと思う。
「ありがとう」
 複雑な気持ちを胸に杏夏は少し微笑んだ。