下校を告げるチャイムが学校の門を出た私たちの耳に小さな音で響いてくる。
いつもなら家に帰るのを拒みながら一人寂しく歩いている道だった。
でも今は違う。
春斗。そして杏夏が私の横を同じ速度で歩いてくれる。
一人じゃないことがどれだけ嬉しいことか。
今の私は熱く語れるほど実感していた。
「じゃあ私はここで。バス使って帰るから。それに時田は私がいると邪魔だろうし」
 微笑みながら横目で春斗を見る杏夏はどこか嬉しそう。
「だからその言い方やめろ」
 春斗は頭をかきながら含み笑いする杏夏に否定する。
杏夏が言う邪魔という意味がわからず、その場を笑顔でやり過ごす。
「じゃあね」
「また明日ね」
 手を振って杏夏を見送る。
「俺たちも帰るか」
「うん……」
 本当なら一緒に帰る人が横にいる時はその時のことだけを考えていたい。
でも帰り道というのは残酷で楽しい時間が闇に近づくようで声が遠くなっていく。