熱い日が続く五月。
時に寒い日が来ると憂鬱になるその感情の波。
今日の朝は曇っていて憂鬱だった。
昼を過ぎれば晴れるという予報通り昼食を食べる頃には明るくどちらかというと湿気で蒸し暑かった。
その中で私たち三人はそれぞれの弁当を広げながら話す。
「じゃあ、お母さんと暮らすの?」
 杏夏は言った後、口に弁当のおかずを口に入れた。
「うん。お母さんと一緒にお母さんの実家で暮らすことにした」
「お母さんはなんて言ってたの?」
 口に入れたおかずを飲み込むと杏夏がもう一度私に質問する。
最近の杏夏は質問攻めで自分の心の姿までわかるようだった。
「夕希が私と一緒でいいなら私は嬉しい。でも今までのように贅沢な暮らしやのんびりできるような空間は少ないわよって」
 母らしい意見だった。
すぐに頷くわけでもない。拒否もしない。
私の本心へと導く言葉で私は母についていくことを決めた。
「そっか。もしかして高校離れちゃう?」
 急に近寄って不安そうなつぶらな瞳を見せる杏夏は可愛らしい。
「駅二つだからここに通うよ」
 杏夏は私の言葉を聞いてゆっくりと椅子に座って「よかった」と小さく言った。
「お前、前のキャラどこいったんだよ。あんなに尖ってたのに」
 言おうとした言葉を春斗が鋭く頬杖をつきながら言う。
それに対して杏夏も目を細めて冷たい顔をする。
「あんただって夕希に会わなければ一匹狼だったくせに」
「うるせ」
 二人はいつも喧嘩口調で話す。
でも心配にならないのはお互いのことをしっかりとわかっているから。
二人はこんな調子でも相性がいいのは人付き合いがなかった私でもわかる。
二人が喧嘩気味に話している間私は二人に「ありがとう」と心で言った。
自分がこんなに変われたのは二人のおかげだったから。