その区切りをつけたのは母が家の門の前に来たから。
母は私に近づいた時目をそらした。
「お母さ……」
「どうして来たの?」
歪む顔と震える声。
それにつられるように私の目に涙がたまる。
沈黙の時間が私の顔を歪ませる。
それでも私は息を吸ってこらえた。
「これ……」
鞄から私は母が残した手紙を出した。
「私の家族でいてくれていたのはお母さんだけだった。お母さんを追いかければよかった。追うことができないならもっと早くに見つけていればよかった」
私の中は後悔でいっぱいだった。
でも後悔を伝えたいわけじゃない。
私は手紙を手に母に近づいた。
「私はお母さんを助けてあげられなかった。でもお母さんは最後まで私のお母さんでいてくれた。今も顔を歪ませてくれているのは、今もお母さんでいてくれてるって思えるの」
「違うよ……」
小さな声を出した母はもうこらえられない涙を流していた。
「私は自分の辛さから逃げ出すためにあなたを置いてきてしまった。一緒に出てくることができればずっと親だったのかもしれない。でもその先のことを考えて逃げてしまった私は……」
母は息を吸う間もなく流れる言葉を声にした。
「私の母親は目の前にいるお母さんだよ」
母に対してはいろんな感情を持っている。
黙って私から離れてしまったことへの疑問と複雑な気持ちや、あんなに陽気な父から与えられた苦しみへの同情。
それでも伝えたいのは私の持つこの手紙に込められている。
「この手紙がなかったら私は耐えることができなかった。住んでいることが嫌で嫌で仕方ないあの家にいることを耐えれなかった。でもお母さんの手紙を見たとき、私を親としてずっと育ててくれたのはお母さんなの」
母は目を隠す。
それでも流れる涙が見える度に私の声も震えていく。
「お母さん。私、置いて行ってしまったお母さんでも、連絡をくれなかったお母さんでもやっぱりお母さんが好き。お母さんが大好きなの」
もう止まらない言葉は止まらない涙を誘う。
鼻をすする音。声を押し殺しても微かに残る声。
私と母の涙は同じ色をしていると私は思う。
母は私に近づいた時目をそらした。
「お母さ……」
「どうして来たの?」
歪む顔と震える声。
それにつられるように私の目に涙がたまる。
沈黙の時間が私の顔を歪ませる。
それでも私は息を吸ってこらえた。
「これ……」
鞄から私は母が残した手紙を出した。
「私の家族でいてくれていたのはお母さんだけだった。お母さんを追いかければよかった。追うことができないならもっと早くに見つけていればよかった」
私の中は後悔でいっぱいだった。
でも後悔を伝えたいわけじゃない。
私は手紙を手に母に近づいた。
「私はお母さんを助けてあげられなかった。でもお母さんは最後まで私のお母さんでいてくれた。今も顔を歪ませてくれているのは、今もお母さんでいてくれてるって思えるの」
「違うよ……」
小さな声を出した母はもうこらえられない涙を流していた。
「私は自分の辛さから逃げ出すためにあなたを置いてきてしまった。一緒に出てくることができればずっと親だったのかもしれない。でもその先のことを考えて逃げてしまった私は……」
母は息を吸う間もなく流れる言葉を声にした。
「私の母親は目の前にいるお母さんだよ」
母に対してはいろんな感情を持っている。
黙って私から離れてしまったことへの疑問と複雑な気持ちや、あんなに陽気な父から与えられた苦しみへの同情。
それでも伝えたいのは私の持つこの手紙に込められている。
「この手紙がなかったら私は耐えることができなかった。住んでいることが嫌で嫌で仕方ないあの家にいることを耐えれなかった。でもお母さんの手紙を見たとき、私を親としてずっと育ててくれたのはお母さんなの」
母は目を隠す。
それでも流れる涙が見える度に私の声も震えていく。
「お母さん。私、置いて行ってしまったお母さんでも、連絡をくれなかったお母さんでもやっぱりお母さんが好き。お母さんが大好きなの」
もう止まらない言葉は止まらない涙を誘う。
鼻をすする音。声を押し殺しても微かに残る声。
私と母の涙は同じ色をしていると私は思う。