二人は私を見た後、目を合わせる。
どちらが先に口を開くか見計らっているようだった。
「私そこに入ったら邪魔じゃないの?」
 先に口を開いたのは杏夏。
でも今までに見たことのない杏夏の動揺する顔は新鮮。
それもそのはず。
杏夏と話すのは今日が最初なのだから。
「だって杏夏、頭いいんでしょ?」
「頭いいって自分では言わないでしょ」
「そうなの?」
 疑問をぶつけた先は春斗。
春斗の目を見て私が言うと春斗は私の額を軽く人差し指で押す。
「夕希みたいに認めたりはしない」
 春斗のからかい方にも慣れていた私は少し頬を膨らませた。
その膨らませた頬を戻して杏夏を見ると、杏夏は静かに笑っていた。
「仲良すぎでしょ。これ見たらさすがにあの女子たちも嫉妬するわ」
 私たちを見て笑う杏夏は笑い方も見た目と合って上品だなと思わせる。
その笑う杏夏はいつものクールな杏夏よりも可愛らしくて親しみやすかった。