扉を開けると窓から明るい光が差し込む。
開けても何も待っていない母の部屋。
誰もいない。片付けが始まったことにより生活感もない。
それでも部屋に入ると胸のざわめきが落ち着いてくる。
部屋の中央に立って私は一度目を閉じる。
春斗の言葉。あの不思議な声の言葉。
その言葉を頭に浮かべて目を開く。
「よし」
 自分に気合を入れて私は母の部屋の荷物に手を伸ばした。
それは私の望む生活と本音を叶えるものを探すため。
動けば動くほど体に熱がこもる。
それでも私は探し続けた。
私が行動することに意味がある。
やっと理解できた。
頭をいろんなものがよぎる中、私は手を止める。
「あった……」
 私の望みを叶える手がかりが私の手元にある。
それは笑みをこぼす感情の裏に戸惑いというマイナスな感情を含んだ複雑な気持ちだった。