目がひんやりとして腫れぼったい感覚を徐々に吸い取っていく。
「どんだけ泣いたんだよ。しかも泣いたくせに今日は元気って……」
 今日は土曜日。
父と婚約者は病院。
妊婦健診で二人とも浮かれた顔をしていた。
「元気にしてないと心が潰れそうだし、一人だとあの二人の顔思い出して辛くなるから。だから春斗の家に来たの」
 二人の顔を思い浮かべると悲しみとか寂しいという感情になっていた。
それが昨日のことで怒りに変わった。
でもその感情をどうすればいいのか、感情の出口がわからなかった。
「俺の家に逃げ込めるようになっただけ夕希にとっては進歩だな」
目を冷やしていた保冷剤を春斗がとって私に微笑んだ。
「溶けてるから新しいのにするか」
「いいよ。もう平気。ありがと」
 立とうする春斗は私の言葉で腰を下ろす。
春斗が横に座っていることに慣れている私は昔と比べたら明らかに違う人物になっている。
そして人を頼れるようになったのも成長だと私は思う。