玄関の靴がハイヒールからスニーカーに変わった頃を思い浮かべると、今でも胸が痛い。
それでもその玄関に入ることができているのは最後まで見守ってくれる春斗がいて、その春斗の顔が頭をよぎるから。
見たくもない革靴が今日はないことは父がいないことを示している。
それでもあの人は出てこない。
もう私に愛想を振りまくのにも疲れて、自分の子供を可愛がる時間に変わったということだ。
それでいい。
私は偽りなどいらないから。