そのまま会話をしながら私たちは少しずつノートを埋めていく。
ノートを埋めていく手を止めたのは誰かが教室に入ってきたのに気づいたから。
見るとそこには杏夏がいた。
杏夏は何も言わずに席にある荷物を片付けている。
何を話せばいいのかわからない。
という不安が取れているのを自覚したのは杏夏に話しかけることができたから。
「杏夏、何か仕事あったの?」
「日直だったから学級日誌届けてきて、ついでに先生の手伝いしてきた」
 私が緊張していないからか、それとも杏夏は話すことに慣れているのか普通の会話が進んでいく。
その時、私の中でひらめいた。
それを言葉にするのはもう慣れていた。
「杏夏も一緒に勉強しない?」
『え?』
 私の発案に二人が同時に私を見る。
でも撤回しようとか言わなきゃよかったという後悔はない。
心のどこかで上手くいくような気がしていたから。