資料室の扉の前に私はもたれかかった。
鞄を横に置いて息を吸う。
「まだ私の声聞こえてる?」
 呟くような声で言ってもどこからか感じる温かさは聞いてる証拠だった。
「うん。まだ聞こえてるよ」
 その声はやはり安心させる不思議な力を持っている。
言い方も優しい。
「今回の助言はあんまりいい結果になってない気がするんだけど」
 私は昨日のことを思い出しながら腕を組む。
まだ昨日のことを受け止めきれてはいない。
でも春斗のおかげで落ち着いた心は持っている。
「ううん。君はこれで強くなった。誰かに気持ちを伝えることで自分の気持ちと向き合えた」
 最近は言っている言葉も理解できるようになった。
そして納得もするようになっていた。
今の言葉も振り返れば頷くことができる。
「でもこれだけじゃないんでしょ?」
 その言葉には期待と心配が交じり合っている。
いつも自分が努力してその結末を変えなければならない。
まるでゲームのように出されていくお題に応えるのは私にとってとても難しい試練だから。
「次を聞きたい?」
「あなたが最初に言ってきたんでしょ」
「そうだったね」
 見えていない姿なのに微笑んでいるように感じる言い方。
一呼吸置いて私に告げる声はしっかり耳に届く。
「君は強くなった。でもそれだけじゃ足りない。今までの全てを振り返るんだ。その君が逃げていること。足りないもの」
 理解できていたはずの言葉がいきなり私の思考を止める。