暗かった周りが一気に照明で明るくなる。
「そこら辺に座ってて。飲み物入れる」
 リビングのソファを指さす春斗はキッチンへと消える。
初めて来る春斗の家は興味で胸を躍らされたり、緊張で胸が大きくなったりと体の中が騒がしい。
白と茶色に統一されたリビングは綺麗でいつも狭い部屋に閉じこもっている私にとって広く感じさせる。
目の前にコップが置かれて春斗が横に来たことに気づく。
この広いリビングのソファに二人で座っていることが緊張を促す。
「夕飯なにがいい?」
 携帯を触りながら話す春斗。
その携帯に映っているのが料理のページだったことに気づいて慌てて手を振る。
「さすがにご飯までは……」
「俺も腹減ったし」
「でも、レシピ見て作ろうとしてくれてる……」
 私が気づいていないと思ったのか携帯を隠して明らかに動揺している春斗はやっぱり不器用だなと改めて思う。
「じゃあ、夕希も一緒に作れば問題ない?」
 真っ赤になった顔で頭を少しかく春斗は携帯の画面を消す。
問題があるのかないのかわからないがもう夕飯の時間だったことは事実でこのままだと春斗も何も食べないことになってしまう。
私は春斗に頷いてキッチンへと向かった。
キッチンにいる時いつも誰もいなくて静かなところでご飯を作っていた。
しかも朝ごはんとお弁当。
夕飯は気づかれないように適当に作ったり用意されているものを黙って食べたりしていた。
誰かとご飯を作るのは、母がいた頃までだった。
「夕希って料理上手いんだね」
 母は私に熱心に料理を教えた。
そのせいか手際が良く慣れているのは自分でも自信があった。