目が熱くまぶたが重い。
時々泣いているときの呼吸になるのを杏夏は横で手を繋ぎながら見ている。
「これで少し落ち着け」
 力のない顔をしながら春斗が指しだす水を見る。
「ありがとう」
 受け取るとそのペットボトルは冷えていてこの季節にちょうどいい温度だった。
「どうして家の前に居たの?」
 水を一口飲んで少し前の過去を見る余裕が出たのかまず一番今に近い過去を探った。
「今日、様子おかしかっただろ」
 春斗に言われて断片的に一日を振り返ると昨日の光景が目に浮かぶ。
昨日の出来事だけで私の頭はいっぱいだったことを思い出す。
「様子おかしいけど今すぐに言う感じもしなかったから」
「私も今日の夕希はいつもと違うってわかってたから、時田の提案に乗ってあそこで待ってた」
 二人は落ち着いている。
ずっと周りを見れていなかった私に気づいて冷静な判断をしてくれた。
その判断が的確だったのもきっと二人の優しさからだろう。