夏のように暑い日が始まりかけたこの頃は教室の中は蒸しているようだった。
私たち三人は図書室で勉強会をしていた。
「わかんね」
 春斗がペン回しをしながら呟く。
その回されるペンをじっと見ながら昨日の光景を思い出す。
どうしてこんなことになるの……
「夕希、国語得意だろ。この文、なんの意味持ってるわけ?」
 春斗が私の名前を呼んで、見ていたペン。というより昨日の光景から意識を外す。
気づけば春斗が頬杖を突きながら私を見つめていた。
「あ、えっと……」
 春斗が指す文が古文だということは理解できた。
でもその古文の意味を考えることができない私。
頭の回転が止まって今にも頭痛に繋がりそうな症状に陥る。
「夕希、体調悪いか?」
 回していたペンを止めて春斗は首を傾げながら私の顔を覗く。
「最近、気候安定してなかったから今日はゆっくり休むためにここで終わりにしようか」
 春斗の言葉に杏夏も私を心配して優しく私を気遣ってくれる。
二人に話したら楽になることを知った。
でも、今回は違う。
話す内容が私にとって負担が多すぎて吐き出せない。
「ごめんね」
 その一言を呟くことしかできなかった。