いつもの公園のベンチに春斗と杏夏と三人で座る。
二人は心配そうに見つめている。
その二人を見ると言い出しづらい。言葉を選びながらも何を話せばいいかわからない。
口を開けない私の髪を風が揺らす。
その風が温かくてあの資料室を思い出す。
「何から言えばいいのか自分でもわかってないんだけど……」
 上手く話せない私の会話を二人は頷いて真剣な顔をして見ている。
「私、家に居場所がないの」
 言葉を声に出した瞬間、私の中の感情のふたが開いて中身が溢れる。
「お母さん、家を出ていったの。私が高校に入った頃に。その理由はお父さんの浮気だった……」
 動揺してもおかしくない話だと思っていた。
それでも二人は顔色を変えずに私の次の言葉を待つ。
そのおかげで悲しい気分の代わりに言葉で出てくれている。
「お父さんの浮気相手は今家にいるの。私のことを嫌ってる。きっとこれから先、私はどんどん邪魔にされていくんだと思う」
 今までずっと殺していた感情。言葉。それが声に出ている。
声に出ているのに不思議とその時は涙が出なかった。
心の中の闇に少しずつ光が灯されていく気分になっている。
「どうしたらいいんだろうね」
 ずっと抱えていた思い。
その抱えていた思いをどう行動してぶつければいいのか解決すればいいのか。
その答えはわからない。
それでも今は前の自分に比べて楽になっている。