窓から見える空をじっと見ていると図書室の壁につけられたスピーカーが震えるように声を出す。
「今、雷で帰るのは危険なため治まるまで学校にいてください」
　スピーカーから聞こえてくるのは先生の注意喚起でその後スピーカーはなんの音も立てなかった。
「もう少しここにいるか」
　横で床に座っている春斗は窓に頭をつけて目を閉じている。
その春斗を見て闇から抜け出したように景色が戻る。
「ごめん。春斗」
　一人で闇を怖がって春斗のことを考えていなかった私はうつむくことしかできなかった。
「大丈夫だよ。人は怖いものくらいあるし」
　そう言って春斗は私の横に立って空を眺める。
空を眺める春斗があの闇を消し去ってくれた。
あの時握った手は温かかったことを思い出す。
春斗の目の先にある景色と同じものを見るように私も空を見る。
「夕希」
　空を見ていた目を私に向けて少し微笑んだように見える表情をする。
「現実は闇だけじゃない。光もあるんだよ」
　パニック状態だった私の言葉を春斗は逃さず聞いて、私に希望を与えるように言った。
「光を探すのは大変。見つけられなかったら俺と一緒に探そう。そしたら怖くないだろ」
　春斗の綺麗な手が私の頭を軽くなでる。
その手に安心して私はやっと頷くことができた。
「今の言い方だと春斗は私とずっと一緒に居なきゃいけないかもね」
　闇から解放されたように笑うことができるようになった私はいつもの冗談を話す。
「それならそれでいい」
　私の表情が変わったのは春斗が予想外の反応をしたから。
でも春斗の目は優しい目をしていて私もそれ以上は何も言わなかった。