私の横にいつもいてくれる二人が笑顔を見せてくれるのが一番楽しい時間だった。
「約束したのに悪いんだけど今日は少し早く帰るね」
　杏夏は横に座っていた杏夏が立ち上がるとカウンターに顔を伏せていた春斗が頭をあげる。
「デートですか」
　意地悪そうに言う春斗に対して、杏夏は動じずに冷静な眼差しを向ける。
「こんなに天気悪いのにデートなんかしない。傘持ってきてないから早めに帰るの」
　鞄を肩にかけると意地悪な質問をした春斗に杏夏も意地悪な表情を見せる。
「あんたにも気を遣ってあげてるんだから感謝してよね」
「うるせ。雨降るから早く帰れ」
　からかう杏夏を春斗が手で払う。
「私も傘持ってきてない……」
　二人の和やかな会話に少し壁を作ってしまったことを言った後から後悔するが、思っていることを言えたことでその後悔も消えていく。
「俺、傘持ってるから一緒に帰れるだろ」
　優しく言う春斗はまた顔を伏せた。
「ありがとう」
　その言葉に「おう」と小さく頷いて杏夏に手を振った。
私も手を振ると杏夏は笑顔で静かに図書室を出ていった。