図書室の古い紙の匂いにも慣れ、私は図書室のカウンターに肘をついて並んだ本棚を眺めた。
図書室の窓から見える景色は灰色。
今にも崩れそうな雲行きだった。
「降らないといいな」
 予報では雨だった。
でも遠くの方で地響きのような雷が聞こえていたのもあり、恐怖心が自分の中に生まれていた。
本棚から図書室の窓に意識が移る頃、図書室の古い扉が開く音がして扉の方を見る。
そこには春斗と杏夏がいた。
二人を見ると心配がなくなったように笑顔がこぼれる自分に気が付き、自分自身が変わっていくのを感じた。
「本当に来てくれたの!?」
「約束したんだから当たり前でしょ」
 昨日の帰り道に言っていたことを実現してくれる杏夏が信頼できるのはわかっていた。
それでも自分の悩みを言えない私は自分自身に腹を立てていた。