下校時刻の放送も慣れたもの。
いつも放課後勉強を一緒にする私たちはこの放送で教室を出る。
「夕希、明日は図書委員?」
 下駄箱から靴を取り出しながら杏夏は私に聞く。
「うん。今になるとその委員会に入ったこと後悔してる。杏夏と一緒に帰れない」
「そういうこと言わないの。後ろで私に嫉妬しながら落ち込む人もいるんだから」
 杏夏は靴を履き終え、私の前で腕組をしている。
その私の後ろを覗き込んでいるのは後ろに春斗がいるから。
最近、杏夏は同じようなからかい方を春斗にする。
「嫉妬なんかしてねーし。その前に夕希は俺いなくてもいいってことかよ」
 春斗の言葉で自分の言葉の中に春斗を入れていなかったことに気づいて慌てて訂正する。
「違う違う。春斗とも一緒に帰りたいよ?」
 本気で寂しそうな顔をする春斗を見て訂正を慌ててしているのに笑みが顔に出る。
「じゃあ、夕希が図書委員の日は私も図書室に居ようかな」
 歩き始める二人を追っている途中で杏夏が提案する。
その言葉が嬉しくて杏夏の顔を覗き込む。
「ほんと?」
「うん。まあこいつは何も言わずとも図書室に行くだろうけど」
 指をさす先はやはり春斗。
杏夏の発言を聞いていると今まで感じなかった春斗への感情を少し気にしてしまう。
理由は春斗が私に好意を持っているかのように杏夏がからかうから。