風も止んで杏夏も落ち着いた頃には外は暗くなっていた。
「ありがとう。話聞いてくれて」
 先ほどよりも表情が戻った杏夏を見て安心する。
「気を付けて帰れよ」
「バス停近いから大丈夫。じゃあね」
 綺麗な手を振る杏夏を私と春斗は同じように手を振る。
「じゃあ俺らも帰るか」
「春斗、家近いんでしょ?」
「送っていく」
 持っている鞄を肩にかけて「行くぞ」と私が歩くのを待っている。
「ありがとう」
 杏夏は今日、私たちを頼って相談をした。
私も杏夏のように頼れば何かが違うのかもしれない。
そう思いながらも一歩踏み出せない自分がいてもどかしい気持ちを持っていた。