名もない花のように生きる君へ

 いつの間にか四月も終わりを迎え、爽やかな風が暖かい風になっていた。
体育の授業が終わって私は杏夏と教室への廊下を歩いていた。
体育は男女別のため春斗はその場にいない。
今日は男子が外で。女子が体育館で時間を過ごした。
少し早く終わってしまったからか教室から見える校庭には男子の姿があった。

 昨日席替えをした私のクラスの雰囲気はまだ慣れないものがあった。
その中で私が嬉しかったことは窓際の席で近くに杏夏がいること。
残念ながら春斗は少し遠い位置になってしまったが一番後ろという共通点があっていつもよりも近くに感じる。
制服を着ながら校庭を見ていると杏夏が私の席の前に来る。
「時田のこと見てるの?」
 意地悪な顔をして笑う杏夏に慌てて否定する。
「見てないよ」
 聞いているのか聞いていないのかわからない杏夏も校庭にいる春斗を見る。
教室から春斗を見ているといつもは向き合っていてじっくり見れない春斗の顔を眺められ、ふと気づく。
「春斗って結構顔のパーツ綺麗だよね」
「今更?」
「え?」
 制服を着終えた杏夏が私の顔を驚きの表情で見つめる。
「時田の顔がいいから嫉妬されたんじゃないの?」
 杏夏の発言で頭の中の引き出しから過去の記憶を引っ張り出す。
確かに春斗と仲良くなった頃に責められた記憶があった。
その理由が春斗がかっこいいからだと知って納得する私は頷いて見せる。
「確かにかっこいいかもね」
「まあ私の好みではないけどねー」
 杏夏は腕を組みながら閉まっている窓に寄りかかる。
制服を着終えた私も次の教室での授業の用意をする。
「杏夏って今恋してるの?」
 さりげなく出た私の話題に杏夏は一瞬考えたような顔をした。
「まあそうかもね」
 杏夏は少し遠くを見ていてどこか寂しそうに見えた。
声をかけようとするといつの間にか授業を終えて教室に男子が戻ってきてにぎやかさが教室に戻る。
「そろそろ準備するね」
 そう言っていつもの顔に戻った杏夏は自分の席に向かっていった。
その後ろ姿を見て少し心配になる私がいる。