資料室への廊下はなぜか冷たい空気が流れ込んで人の気配は一切しない。
どうしてここにあるのかもわからない。
でもここに来ると安心とともに希望を与えてもらえていた。
資料室の扉はやはり閉まっている。
いつも通り壁に背中を向けて寄りかかると包まれているような温かさがある。
「私ね、友達ができたの」
「よかったね」
 返事を期待していなかった私は少し驚くが、もう振り返ることもない。
「安心できたり、楽しいと思えたり。私はいつもこの感覚に対して壁を作っていたんだね」
「君は一人じゃないから」
 その声は私の胸に響いて心地よさを生み出す。
なぜこの声が安心するのかわからないが、話をするだけで自分の心を整理することができる。
「でもね、頼ることができないの……」
 ずっと楽しくて今までの辛さを学校で感じることはなかった。
それでも心から安心できる自分がいなかった。
どこかで考えていること。
それは家の問題。
この問題を自分の中にしまい込むことによって苦しさは積み重なっていた。
「自分自身をまっすぐに見せることも必要だと僕は思うんだ。だから君も自分自身を打ち明ける。もちろん今すぐに全部を見せることはしなくていい。一つ自分のことを打ち明けられたらきっとその先も頼れるようになると思うんだ」
 初めてこの声の持ち主が言うことがすぐに理解できてやっとその言葉だけで前に進む準備ができたように感じる。
「わかった。心がけてみるよ」
「うん。君のことを僕は応援しているからね」
 言い終わる頃には包んでいた光とは別の窓から入る日差しの温かさを感じるようになった。
それはこの会話が終了したことを告げる合図のようだった。