桜が咲く三月の風。
昔はこの桜も風も嫌だった。
でも今はその桜が好きになった。
その桜の季節がなかったら二人に出会えなかったと思うから。
卒業した高校の前を通ると私は足を止めた。
それに気づいて春斗も足を止めて私の横に来る。
「春斗に出会えてよかった」
「急になんだよ」
 照れ隠しなのか春斗は私に顔を見せない。
笑いながら私は学校を見つめた。
ここが私の世界の原点。
未来の春斗の声が私を救ってくれた。
「ねえ」
 過去をさかのぼると私は今までずっと気づかなかった一番不思議なことに気が付く。
「未来の春斗は自分の人生を終わりにしようとしている私を救うためって言ってた。でもあの頃は春斗とちゃんと話したことがなかった。どうして自分の寿命まで使って私の未来を変えたかったんだろう」
 私はあの時誰も受け入れられていなかった。
それでも春斗は存在に気づき、私を救おうとした。
それは謎のままだった。