未来の春斗は顔色を変えない。
口を結んでることがわかっても私は真実を待った。
未来の春斗は口から息を吸った。
「君が生きる道を示すため」
「え?」
 全てを忘れた。
今の言葉が私を覆いつくす。
頭のどこかで未来の春斗が見える。
「君はあの日、そう僕と話した日。生きることをやめた」
 目の前の景色は見えずに過去の映像が流れる。
忘れていたはずの記憶。
楽しい日々を送っている私が今の私。
未来の春斗がいなければ未来の私もいなかったということ。
「家族や同級生が君にとって辛さの原因だったんだろう」
 うつむくことで呼吸と冷静を保とうとする。
それでも過去の映像は今の私には苦しい。
「僕が話したあの日は運命を変える唯一の時だった」
 未来の春斗が話す度に記憶がよみがえってくる。
きっと未来の春斗の力なのだろう。
私の存在を拒否するような父の言動。
話すことを知ったそばから実感した人間関係の息苦しさ。
あの時の私には辛いことだらけだ。
思い出せば胸が苦しく、足に力が入ってるのかわからない状態。
でも振り返れるのは、今の私の生活が幻ではなく現実だから。
そのことに気づけばうつむいていた顔をあげることだけはできた。