私が質問しない限り答えない目の前の春斗。
でも一つわかるのは心の底からの微笑みではないこと。
「気になることが多そうだね」
 図星の私は目を泳がせることしかできなかった。
目の奥で笑いを失った春斗が私の姿を見て少し笑いの欠片を拾ったように感じた。
自意識過剰というものだろう。
「じゃあ、まずは声。これは借りた声。理由は後で」
 指を出していくつかのことを教える合図をする。
「次は話し方。君の頭の中に浮かぶ人物の同じ言い方をしたらすぐに混乱するでしょ」
 定番の三つという数のヒント。
悲しそうでどこか笑っている。
表情が読めない。
「最後はどうして僕がここにいつもいるのか。君が一番聞きたいこと」
 春斗の表情を見ると私は何か大事なことに触れてしまうように感じて目を背けた。
その私を見ても歩み寄ってくる春斗を横目で見た。
「僕は、未来から来た時田春斗。君が知っている春斗の未来の姿だ」