お腹がすいてきた昼休み前の授業も終わり、それぞれが昼食をにぎやかに食べている。
相変わらず一人で食べる昼食はいつも通りの味。
自分で作る弁当はいつもと変わらない。
「それちょうだい」
 一人黙々と食べる私の横で呟く声。
見ればやはり春斗がいる。
私は春斗以外に話せる人がいない。
話そうと努力できる人がいない。
春斗以外に声をかけられるということが最近ないことに気づく。
「自分のお昼は?」
「あるけど」
「じゃあそれ食べればいいじゃん」
 あげる素振りを見せていない私を見ても懲りずに私の前の席に後ろ向きで座っている。
「どれが食べたいの?」
 ため息混じりに声を出す私。
それでも何も気にせず卵焼きを指さす。
私の顔を見て「いい?」と聞いてくる春斗に小さく頷くと嬉しそうな顔をして卵焼きを頬張る。
教室にいる時の春斗は髪が邪魔して表情に一番大事な目があまり見えない。
だから怖いとか怒っているとか不安が募りやすいのだと自分なりに解釈して心の中で頷く。
「ごちそうさま」
 小さく私に聞こえる程度で言うのを見るとまるで他の人にはこのままの自分を見せるのを避けているようにも感じた。
「ねえ、ポップ完成した?」
「あ、完成した」
 忘れていたポップを鞄のクリアファイルから出して春斗に渡す。
自分が作ったものを人に見せるのは昔から恥ずかしくて早く時間が過ぎてほしいと願う。
「じゃあ、これ出してくる」
 ポップを片手に席を立った春斗はいつもの気だるい様子を見せて教室を去る。