てもっとストレスが溜まったんだと思う。そ
れで、ネコにあたったんだよ……事件は、ひ
よっちの家で起こった。俺とひよっちが、ネ
コで遊んでいたんだ。本当、可愛くてな。も
うずっと遊んでたよ。遊んで帰る時だった。
突然、ドアから入ってきたんだ、あいつが。
俺たちは必死で止めたけどあいつは、ネコを
取り上げてズボンからナイフを取って……」
 彼はズボンからタバコを出して、俯いた。
 彼の言葉を読み取るように、私は彼の変わ
りに口にした。
「殺した」
 人間は殺したという言葉を簡単に口にはし
てはいけない。だが、事実を受け入れなくて
はならない。
「ああ、だから。その時、携帯で警察に通報
しようとした。でもあいつは警察に通報した
ら、あんたらどうなると思う? って、言っ
てきたんだ。俺たちはあいつに殺される、こ
こから、逃げなきゃって。だけど、ひよっち
は呆然とあいつを見ているだけだった。俺は
ただあいつに言ったんだ。もう、ひよっちと
は一切会うなって。俺たちは、その場から逃
げ出した。窓から。あいつは俺たちに返事も
しないで何故か笑ってたよ。それからひよっ
ちは、俺の家に住むことになった。俺の家は、
ばあちゃんだけだから。何も言わないで住ま
わせてくれたよ」
 タバコに火を付けて、そのタバコの煙が彼
の悲しさを表しているように見えた。
「……私、何も知りませんでした」
 私は本当に何も知らない。彼のおかげで自
分が何をしたいのか見つけようと思えるよう
になったのに。何も、彼の気持ちより自分の
ことしか頭になかった。
 私を見てタバコをプハーと息を吐いて彼は
言った。
「いいんだよ、知らなくて。別に。でも、お
前がいてくれてよかったかもしれねぇな、ひ
よっちも」
「はい? どういう意味でしょうか?」
 コバさんは、タバコを地面に捨てて乱暴に
踏みつけて照れ臭そうに言っていた。
「なんでもねぇよ。それはいいとしてネコカ
フェ。ひよっち、引き受けたのか?」
「……引き受けてました」
 彼は、呆然としていた。
「なんでだよ! あ――戻るぞ!」
 乱れている髪をまたグチャグチャにして、
彼は地面を蹴り飛ばしていた。
「え? ちょっと待ってください」
 コバさんが急に走って行くので私は慌てた。
「早く行ってるぞ―!
「え? ちょっと待って―!」