「よし、準備できたので撮影はじめまーす!」
配置も決まったらしく、桜さんが商店街の魚屋のようにパパンパンと手を叩く。おじさんはカウンターでコーヒーを啜りながら、俺達の準備を楽しそうに見ていた。
「じゃあ、まずはこっちの角度からね。和志と陽菜、隣同士で座ってくれる? 和志……や、陽菜が手前の方がいいかな」
「分かりました! 和志先輩、そこどうぞ」
もう撮影班だけでなく、キャスト同士も名前で呼び合っている。
俺達も「和志、もう少しだけ椅子ひいて」という感じで声をかけるのが当たり前で、少し時間をかけないと「あ、永田君だ」と思い出せないようになっていた。
「陽菜はいつもの感じでベラベラ和志に話しかけて。和志はちょっと一歩引いて相槌」
「この前の買い物のときみたいな感じですよね、大丈夫です」
「アタシもあのテンションでいきます!」
撮っていくうちに、自然とキャラクター像も固まっていった。細かい演技指導がなくても、佳澄と和志と陽菜はカチンコを鳴らす前にカメラの前に姿を現す。
全員がこの物語に入り込んで、色とりどりの中身が見えるように外に向けて光を照らしているような、そんなイメージ。
「キリ君」
次のカットの前に桜さんに呼ばれ、小走りで彼女のもとへ駆け寄る。
「これ終わったら近くの公園でご飯ね。買ってきてもらえる?」
「いいですよ、何にしますか?」
そうねえ、と数秒上を向いて考えた後、彼女は新しいいたずらを思いついた子どもさながらに顔をくしゃっと綻ばせた。
「よし、最後だしバカなことしよう! 向かいにモックバーガーあったでしょ? 7人だから……ハンバーガーを40個! あとは、ポテトLを7つ、ナゲット15入りを3つ!」
「何なんですかそれ……」
「ダメかな?」
「最高に楽しいじゃないですか」
だよね、と言って2人でニヤける。
「じゃあ行ってきます」
「荷物持つの大変なら連絡してね!」
心配そうに送り出されたけど、実際もっと大変だったのは、「ハンバーガーを40個、ですか?」とやや困惑気味に聞き返す店員さんと周りのお客さんの視線だった。
「はい、お昼です!」
年始の初売りで福袋を買い漁った人のように、大きな袋を2つ抱えて公園に激走する。その中身を見て、颯士さんは「ヒャッホー!」と叫んだ。
「ハンバーガーパラダイスだ!」
「ソウ君、こっち、ポテトが箱から出て海みたいになってる!」
公園の2つ並んだベンチに座り、真ん中に袋を置く。食べても食べてもなくならないハンバーガーに、涼羽は「もう飽きてきた……」と呟きながらジトーッと手元の3つ目を見つめた。
「おい月居、ノルマは1人5個だぞ。ポテトもあるしな」
「夏本さん、なんでランチにノルマ制なんですか」
「あ、陽菜、それナゲット用のBBQソースじゃん」
「フッフッフ、監督さん、よく気付きましたね。これをポテトで掬ってハンバーガーに付けて食べるんです。そうすると見事な味変!」
「おおお、なんかすごい! 俺もやってみよっと!」
休日の公園、ファストフードではしゃぐ、高校生7人。
その不自然ささえもネタにしながら、直射日光と涼羽からもらった6個目のハンバーガーでカラカラの喉を1ℓペットボトルのお茶で潤した。
配置も決まったらしく、桜さんが商店街の魚屋のようにパパンパンと手を叩く。おじさんはカウンターでコーヒーを啜りながら、俺達の準備を楽しそうに見ていた。
「じゃあ、まずはこっちの角度からね。和志と陽菜、隣同士で座ってくれる? 和志……や、陽菜が手前の方がいいかな」
「分かりました! 和志先輩、そこどうぞ」
もう撮影班だけでなく、キャスト同士も名前で呼び合っている。
俺達も「和志、もう少しだけ椅子ひいて」という感じで声をかけるのが当たり前で、少し時間をかけないと「あ、永田君だ」と思い出せないようになっていた。
「陽菜はいつもの感じでベラベラ和志に話しかけて。和志はちょっと一歩引いて相槌」
「この前の買い物のときみたいな感じですよね、大丈夫です」
「アタシもあのテンションでいきます!」
撮っていくうちに、自然とキャラクター像も固まっていった。細かい演技指導がなくても、佳澄と和志と陽菜はカチンコを鳴らす前にカメラの前に姿を現す。
全員がこの物語に入り込んで、色とりどりの中身が見えるように外に向けて光を照らしているような、そんなイメージ。
「キリ君」
次のカットの前に桜さんに呼ばれ、小走りで彼女のもとへ駆け寄る。
「これ終わったら近くの公園でご飯ね。買ってきてもらえる?」
「いいですよ、何にしますか?」
そうねえ、と数秒上を向いて考えた後、彼女は新しいいたずらを思いついた子どもさながらに顔をくしゃっと綻ばせた。
「よし、最後だしバカなことしよう! 向かいにモックバーガーあったでしょ? 7人だから……ハンバーガーを40個! あとは、ポテトLを7つ、ナゲット15入りを3つ!」
「何なんですかそれ……」
「ダメかな?」
「最高に楽しいじゃないですか」
だよね、と言って2人でニヤける。
「じゃあ行ってきます」
「荷物持つの大変なら連絡してね!」
心配そうに送り出されたけど、実際もっと大変だったのは、「ハンバーガーを40個、ですか?」とやや困惑気味に聞き返す店員さんと周りのお客さんの視線だった。
「はい、お昼です!」
年始の初売りで福袋を買い漁った人のように、大きな袋を2つ抱えて公園に激走する。その中身を見て、颯士さんは「ヒャッホー!」と叫んだ。
「ハンバーガーパラダイスだ!」
「ソウ君、こっち、ポテトが箱から出て海みたいになってる!」
公園の2つ並んだベンチに座り、真ん中に袋を置く。食べても食べてもなくならないハンバーガーに、涼羽は「もう飽きてきた……」と呟きながらジトーッと手元の3つ目を見つめた。
「おい月居、ノルマは1人5個だぞ。ポテトもあるしな」
「夏本さん、なんでランチにノルマ制なんですか」
「あ、陽菜、それナゲット用のBBQソースじゃん」
「フッフッフ、監督さん、よく気付きましたね。これをポテトで掬ってハンバーガーに付けて食べるんです。そうすると見事な味変!」
「おおお、なんかすごい! 俺もやってみよっと!」
休日の公園、ファストフードではしゃぐ、高校生7人。
その不自然ささえもネタにしながら、直射日光と涼羽からもらった6個目のハンバーガーでカラカラの喉を1ℓペットボトルのお茶で潤した。