今、私と真宙くんは何も話してはいない。

 静かに、そして穏やかに時が流れている。

 そんな中、上を見た。

 視界に入ったのは、美しい緑が広がった世界。

 そこに風が吹けば、美しい緑の葉がやさしく揺れる。

 そのときに葉っぱ同士が触れ合って生まれた音。
 それは、まるでやさしい歌声が聞こえてくるような。
 そんな感覚を覚える。

 その歌声が。
 とても穏やかで。
 とても美しく感じた。


 私は、その歌声に夢中になっていた。



「なんかさ、いいよね」


 そのとき。

 真宙くんがそう言った。


「みんなが学校にいるときに、
 それ以外の場所で、こうしてのんびりとくつろいでるのって、
 なんか特別な時間を過ごしてるみたいで」


 あ……。


 真宙くんの言葉で気付いたことがあった。

 なんで真宙くんは『学校を休もう』と言ってくれたのだろう。

 真宙くんも私と同じで学校を休みたかったのかな。


 ……って。

 ……‼


 もしかして……。

 私のため……?

 私が今日、学校を休みたいと思っていたから。
 真宙くんはそれを察して合わせてくれた……?


 ……って。

 そんなわけはないよね。

 私とは今日、話したばかりなのに。
 そんなことあるわけがない。


 って、前からの知り合いや友達でも。
 休みたい人に合わせるなんて。
 そんなこと……ないよね……。