「朱里、さっきから変な汗かいてどうした?」

「いやぁー…実は鍵どこかに落としちゃったみたいで、家に帰れないんだよね。まぁ、一日くらい野宿しても大丈夫かなーって」

「この土砂降りでそれは流石に…」

うん、普通にそういう反応になるよね。我ながらバカな発言をしたと思うよ、今のは。

「わかった。黒炎くんが良いって言うんだったら泊まるよ」

「ああ、大丈夫だ。むしろ、今まで家を隠してるようで悪かったな…」

「いいんだよ、気にしてないから」

嘘だ。本当は再会したときからずっと気になってた。アカリちゃんという存在も、どうしてギャルゲー好きになってしまったのか、黒炎くんがどこに住んでいるかも全て。

今日、その全てがやっと知れるんだ。

あの日、深い闇の中にいるような目をしていた黒炎くん。
私は黒炎くんの全てを知って、それでも尚、好きでいられるだろうか。

不安と緊張。色んな感情が入り交じる中、私たちは黒炎くんの家に足を進めた。