「聞こえなかったのなら、もう一度言います。このチョコを本命チョコとして受け取ります」

「えぇ!?」

聞き間違いじゃなかった。私は、驚いて声が出てしまった。

すると、バンッ! とリビングから音がした。焔さんが何か落としたのかな? なんて思っていたら、「また性懲(しょうこ)りも無く、朱里を口説いてるんですか?」と黒炎くんが怒りながら、こっちに近づいてきた。

「それこそ個人の自由だと思います。どう解釈しようが僕の勝手です」

「心から、俺たちの交際を祝福してたんじゃないんですか」

例によって口喧嘩が始まってしまった。そして、さっきの冒頭に戻るわけで。

黒炎くんが紅蓮会長の家に何事もなく普通に入ってくるのは、紅蓮会長は驚いたりしないのか。