「黒炎もこんな可愛い彼女を選ぶなんて成長したなと思いまして」

「可愛いだなんて……!」

私はブンブンと首を横にふる。でも、焔さんみたいな人に褒められるのは素直に嬉しい。

「あ、紅蓮会長にトリュフ渡してきます。たぶん、執筆で疲れてるだろうから。やっぱり疲労には甘いものが一番ですよね!」

このまま焔さんと会話するのも悪くないけど、この場にいたら褒めちぎられそうで私の心臓が持ちそうにない。焔さんは相手のことを悪く言ったりしない。夏祭りで初めて話したときもそうだったから。

だからこそ、紅炎さんに掴みかかった時、焔さんの予想外の行動に一瞬、動けずにいたのだ。あの震え方は尋常じゃなかった。なのに、私のことを守ってくれようとした。本当に焔さんはいい人だ。