「名前を呼んでくれませんか。貴方はいつも自分のことを堅物会長だの会長と呼ぶので。……いつからか黒炎も自分のことを名前で呼ばなくなったので」

それ、今重要なことなのだろうかと疑問には思ったけれど、黒炎くんから呼ばれなくなったことが原因かどうやら私には名前で呼んでほしいみたい。

「私、告白を断ったのに……ひどく傷つけたのに、それでも手伝ってくれるんですか?」

「そんなこと、今は関係ありません。それに貴方は言ったでしょう。これからも友達でいたいと。だったら頼ってください、友達である僕を」

手を差し出された。告白を断った時は寂しそうな顔をしていた。ハロウィンのときだってそうだ。だけど今はなんだか嬉しそうだ。

「……はい。紅蓮会長、お願いします。黒炎くんが別の学校に行かないように協力してください!」

「その言葉を待っていました。わかりました、友達の頼みなら喜んで聞きます」

私は握り返す。友達である紅蓮会長の手を。私は心強い友達を持った気がする。
今は紅蓮会長に感謝の言葉を心から送りたい。