「朱里、守ってくれてありがとう」

「どういたしまして」

こんなことでしか黒炎くんを守れないのがつらい。だけど、そう難しく考える必要なんかない。私は黒炎くんをそっと抱きしめた。

今は黒炎くんが少しでも私に癒やされて、元気を取り戻してくれたら。

こんな状況で無理かもしれない。けれど、こんな状況だからこそ私はこうして黒炎くんに寄り添っているのだ。

「朱里……」

「朱里様にお怪我がなくて幸いです。ですが……」

「ふ、ハハハハハ。まさか少女に頬を叩かれる日が来るなんてね。黒炎が選んだ娘はどうやら、ただの庶民じゃないらしい。……君たちに試練を与えよう。面白いものを見せてもらったお礼だよ。それに合格することができれば、二人の交際を認めようじゃないか」