俺は美羽さんの服を強く掴み、静かに泣いた。

「さっきは冷たい態度をとってごめんなさい。本当は家出してきたんだ。だけど、あの家には帰りたくない」

「無理して全てを話そうとしなくていいわ。……じゃあ、私達の家で一緒に暮らさない?」

「でも……」

あまりに唐突な提案に俺は戸惑うばかりだった。血の繋がりもない、ましてや今会ったばかりでそんなことをしてもらうわけにはいかない。

「却下。美羽姉さん、人間一人を育てるのにどれだけの養育費がかかると思って」

「紅蓮。貴方だって本当は心配してるんでしょう?」

「……それなりに、ね。こんな場所で野垂れ死にされても迷惑なだけだから」

心配してくれているんだろうか。この頃の会長は今みたいに堅苦しくなかった。落ち着いてはいたけど、まだ中学生なんだなという感じで。