「美羽姉さん、もう夜も遅いから早く帰ろう」

「駄目よ、紅蓮。この子が困ってる」

「決めつけるのはそっちの勝手かもしれないが、俺は困ってなんか……」

「あのね、気のせいだったら無視してくれていいんだけど。さっきから、貴方の心が泣いてるの。助けてって。……今までずっと我慢してきたのね、黒炎君。一人でつらかったでしょう?」

「……っ」

美羽さんは優しい言葉をかけて、俺を抱きしめた。頭を撫でてくれた。振り払うことは簡単だった、拒絶することだって。

けれど、直感で気付いてしまったんだ。美羽さんは嘘を吐いていないと。だって、その証拠に俺の今まで隠してきた本音をいとも簡単に察してくれたから。

さっきまで疑っていた俺が馬鹿らしくなるほど、美羽さんはあたたかく綺麗な心の持ち主だとぬくもりでわかった。嘘の匂いなんてしない……とても安心する。