「……」

どうせ何か裏があるに違いない。それに弟のほうは俺を家に入れるのは嫌がってるようだし。それに、なんのメリットも無しに、俺をかくまうっていうのか?

美羽さんに対する第一印象は、“お人好し”だった。紅蓮のような反応が普通だと思っていたから、中学生ながらに常識人なんだと思った。

今考えると、このときから会長は落ち着いていたな。
家出したあの日、優しく声をかけてくれたのが美羽さんと今の会長だった。

けれど、誰も信用出来なくなっていた俺は見ず知らずの人を助けようとするなんてどうかしていると美羽さんを疑っていた。

「メリットもなしに俺を助けるってのか」

キッと鋭い目で殺気を出しながら、美羽さんを睨みつけた。

「メリット? 人を助けるのにそんなことは考えてはいないわ」

前言撤回。美羽さんはただのお人好しではなく、“馬鹿がつくほどのお人好し”だ。