ここには俺の居場所はない。
そう思った俺はついに家出をすることを決意した。もちろん、何も持たずに、だ。あの家には二度と戻らない、そう誓った。

小学生のガキが何言ってんだって思うだろ? だけど、それ以上に当時の俺は限界だった。行くあてもなくさまよった。どのくらい歩いたかわからない。

「寒い……」

もうすぐ春になるとはいえ、まだ外は寒い。俺は、公園のベンチに一人でいた。声をかけてくれる人は誰もいなかった。どうせ俺は柊家の次男としてしか存在価値がない。でも、そんなのは嫌なんだ。

「紅蓮、こんなところに貴方くらいの子供が……」

「姉さん、いい加減子供扱いはやめて。僕は中学生だって」

「んっ……」

いつの間にか眠ってしまっていた。歩き回ったから疲れたんだろう。
近くで声がする。