「そんなこと……ないもん」

父の言ってる意味はわからなかった。だけど、少しでも父が元気になるように俺は四葉のクローバーに小さな願いを込めていたんだ。母のことも大好きだったけど、父のことも大切に思っていた。

だけど、俺の思いとは裏腹に家庭は壊れていった。

「綺麗だよ……焔」

「ありがとうございます、父さん」

「違うだろ? 僕の名前を呼んでごらん」

「紅炎様」

「……」

異様な光景だった。ある日をさかえに兄は髪を伸ばすようになり、父も以前とは変わっていた。どう変わっていたのかはあきらかだった。兄に自分の名前を呼ばせたり、兄のために女の子用の服を着せたりしていたのだ。

「あぁ、黒炎。焔は心の病でね、今は不安定な時期なんだ。だから出来るだけ声をかけないでおくれ」

「心の病ってなに? それに兄さんは男の子で……」