黒炎くんは紅炎さんに頼み込もうとする。これ以上、私が傷つかずに済むようにと。だけど、自分自身のことも少しは心配して。

「黒炎、君は今まで彼女に隠してきたんだろう? だったら今ここで話すべきじゃないのか。君が僕から逃げて、どうやって生きてきたのかを」

楽しそうに高笑いをする紅炎さん。きっと心の底から、この状況を誰よりも楽しんでいるのだろう。人が苦しんだり悲しんだりする表情を見るのがおそらく好きなんだろうと確信していた。じゃないと、今ここで笑う意味がわからない。

「黒炎くん。私……知りたい、黒炎くんの過去を」

「朱里、でも……」

「大丈夫、どんな黒炎くんだって私は受け止められるから」

「……わかった、話す」

黒炎くんは深く頷いた。そうして深呼吸をして、一旦落ち着きを取り戻したのか黒炎くんはゆっくりと口を開いた。

今から語られるのは黒炎くんの悲しい過去。