「ああ、おかえり黒炎」

「兄貴は自分から女になるって言ったんだぞ。これは心の病だから仕方ないって……俺はそれが受け入れられず家を飛び出したのに。兄貴が変わった本当の理由は親父だったっていうのか?」

黒炎くんはその場で泣き崩れるようにしゃがみこむ。どうやら、紅炎さんは黒炎くんも嘘をついていたようだ。真実を知って、ショックだったんだろう。

「黒炎くん……大丈夫?」

私はすぐさま黒炎くんの元へと駆け寄った。だってそうしないと黒炎くんが今にも消えてしまいそうだったから。

「ああ、平気だ。朱里もこんなところに連れてきて悪かった」

「黒炎くんのせいじゃないよ。私は大丈夫だから」

「黒炎のせいじゃないだって? 君が黒炎と関わることがなければ、こうしてここに足を踏み込むこともなかったのに」

「朱里だけでもここから返してやってくれ……お願いだから」