「木の上から降りれなくなった猫を助けてたら、そのときに引っかかれてな」

「ね、猫ちゃんに?」

そのわりに引っかき傷には見えないんだけど。でも、深い傷ではなさそうだから良かった。黒炎くんが喧嘩してる? ってことはないとは思うんだけど。やっぱり黒炎くんのこと、まだまだわからないことだらけだ。

それがきっと嘘でもいい。私を傷つけないようにしてるんだよね。だけど、少しは私に弱みを見せてくれてもいいのに……と思う私もいた。

「朱里。そのピンクの浴衣、可愛いぞ。俺も浴衣着てくるべきだったか」

「あ、ありがとう。私服でも黒炎くんはカッコいいよ!」

私があれこれ考えている間に褒めるのはやめてほしい。さっきまで暗いこと思ってた私が馬鹿らしく思えてくるから。 

あれ? 私、勢い余って何言って……今の撤回したい。