私は会長さんの腕を掴んだ。どうしても黒炎くんに繋がる何かが欲しくて。

急に引っ越した理由は親の離婚だって思ってたから。そんなの私の想像に過ぎないから、今までそう思うことで自分を納得させてきた。

でも、本当は黒炎くんが引っ越した本当の理由が知りたくてムズムズしていた。

「残念ですが、それを貴方……霧姫朱里に話すことは出来ません」

「どうしてですか!?」

「貴方は自分の秘密を自分が知らないところで知られていたら、どんな気持ちになりますか」

「それ、は……凄く、嫌な気持ちになります」

やっぱり会長さんは私なんかよりずっと大人だ。黒炎くんと同じ立場になってみれば簡単な話なのに、どうしてそれに気付くことが出来なかったんだろう。

黒炎くんのことを知りたいあまりに気持ちが先走っていたのかもしれない。