「ひとまず日陰で水分補給と手当てをします」

「は、はい」

会長さんはそういうと私を抱えたまま、歩き出す。まわりは「まさか、あの堅物会長が人を助けるなんて!」と言った目線をこちらに向けている。

視線が痛い。ただでさえ会長さんは学校でも目立ってる存在なのに。でも、こんな平凡な後輩を助けるなんて私自身も意外だった。

「朱里、大丈夫か!?」

黒炎くんがどこからか私を心配して来てくれた。

「柊黒炎。幼馴染が危ない目に遭ってるときに助けに来ないのは幼馴染失格ですよ。大切な幼馴染なら尚更……」

だけど、会長さんは厳しい言葉を黒炎くんにかけた。その目は氷のようで私の背筋まで凍るようだった。

会長さんは私を離すことなく、黒炎くんの前を通り過ぎた。

「っ……俺だって出来るなら一番最初に助けたかったのに」

黒炎くんが何かを呟いていたようだけど、私にはその言葉がなんなのか聞こえなかった。