「もしかして会長さん?」

「会長だったら逃げたりしない」

「だ、だよね……」

私には黒炎くんが誰から逃げているのか皆目見当もつかず、的はずれな質問をしてしまう。

「……」

「……」

観覧車がゆっくりと上にあがる時間がやたら長く感じる。これほど沈黙な時間、いつぶりだろうか。

黒炎くんに話しかけたいけど、でも不快にさせてしまったら? 重い空気のせいで暗いことばかり考えてしまう。

だけど、窓から見える景色はそれを忘れさせた。ねぇ、黒炎くん。見て! 夕日がすっごく綺麗!」

もうすぐ日が沈む。あたりは茜色の空。それはとても綺麗で。毎日見ている景色なのに、今は目の前に黒炎くんがいる。

好きな人と見る夕日はなんて素敵なんだろう。