「2名様ですね〜、足元気をつけてお乗りください」

「ありがとうございます! 朱里、気をつけろよ」

「うん」

さりげなく手を差し出してくれる黒炎くんだけど、やっぱりどことなく焦っていて冷や汗をかいている。

そして、私たちは観覧車に乗り込んだ。普通はドキドキするはずなんだけど、今は黒炎くんの様子がおかしいことが気がかりで声をかける。

「黒炎くん。さっきは慌ててたみたいだけど、何かあったの?」

「知ってる奴らを見かけてな。気のせいだったらいいんだが、もし見つかったら……」

そのあと、黒炎くんは黙り込んでしまった。
沈黙がしばらく続いたあと、黒炎くんは「今更、俺になんの用があるっていうんだ」と独り言のように小さく呟いていた。