結局、僕と加恋ちゃんは歌をほとんど歌わずにカラオケボックスを出た。



 そろそろ帰る時間がきて、その帰り道。


 僕と加恋ちゃんは手をつないで歩いていた。


 僕は、さっきのことを加恋ちゃんに謝らなければいけないと思った。


「加恋ちゃん、さっきはごめんね、僕、また加恋ちゃんに、あのことを訊いてしまって」


 時期が来たら言うって加恋ちゃんに言われているのに、また僕は……。


「気にしないで、優くん。わたし、すごく嬉しかったよ。優くんに『ずっと一緒にいてほしい』って言ってもらえて」


 ……加恋ちゃん……。


「加恋ちゃんに『嬉しい』って言ってもらえて僕もすごく嬉しいよ」


 加恋ちゃんの気持ちは僕に繋がっている。


 加恋ちゃんが『嬉しい』と言ってくれると僕も嬉しい。

 加恋ちゃんが『楽しい』と言ってくれると僕も楽しい。

 加恋ちゃんが『幸せ』と言ってくれると僕も幸せ。

 加恋ちゃんのすべての気持ちは僕にとってのすべての気持ち。


 加恋ちゃんの存在は僕にとって大きな存在。


 僕には加恋ちゃんがいない人生なんてあり得ない。


 僕は改めてそう思った。