位置を把握している紫月に連れられ、拓斗くんのお墓の前までやってきた私たち。辺りには誰の姿もなかった。


「ご両親、いないみたい」

「ああ。しかし、供えられている仏花は古いものみたいだ。待っていればそのうち来るのではないか」

「そうだね。とにかく私たちも、お線香立てようか」

「そうだな」


 お墓を訪れるのだから、一応仏花とお線香を私は持ってきていた。まだ成仏していない拓斗くんには、お墓で祈りを捧げてもその思いは届かないらしいけれど、自分の習慣としてちゃんとお供えしてあげたかったのだった。

 水汲み場にあった桶に水を入れて拓斗くんのお墓の前まで持っていき、水入れの水を新鮮なものに入れ替えてから、持ってきた真新しい仏花に差し替える。そしてマッチでお線香に火をつけてから、半分を紫月に渡し、お墓に供えた。

 手を合わせてから目を開いた後、はっとする。そういえば神様って人間のお墓参りの仕方分かるのかな?と紫月の方を見てみた。紫月は私の後にお線香を供えたあと、瞳を閉じて合掌していた。神様だからそれくらい知っていたのかもしれない。あるいは、私の真似をしたとか。

 そんなことを考えている時だった。


「あら……? あなた方は?」


いつの間にか、三十代くらいの夫婦が私たちの傍らに立っていた。ふたりは不思議そうに私たちを眺めている。

 女性は目元が。男性は鼻の形が。――拓斗くんに、そっくりだった。


「あっ、えーと……。私、潮月神社の近くに住んでいまして。三年前に事故で亡くなった拓斗くんとは顔見知りでして……。ふと気になって、お墓参りに来てみたんです」