「あの様子じゃ、本人に説得は逆効果だ。もう投げやりになってしまっている。私たちがさらに何かを言ったところで、かえって意地を張ってしまうだろう」

「でも、このままじゃ悪霊に……!」

「待て、そう焦るな。少年と話している間、彼の匂いを探り、本人のことや両親の居場所、最近の行動を突き止めたんだ」

「え! そんなことできるの!?」


 伊達に神様じゃないんだなあと感心してしまう私。


「少年の名前は拓斗、九歳だ。両親は、父親の仕事の都合で最近少し遠方に引っ越してしまったようだ」

「あ! だから事故現場にあまり来られなくなっちゃったんだ」

「そうだ。だがもちろん、両親はあの子のことを忘れたわけではない。月命日には欠かさず、墓に花を手向けに行っている。だが墓での祈りは、霊界に成仏した霊に届くもの。地縛霊として現世にとどまってしまっている拓斗には、両親の思いが伝わらない状態なんだ」

「そうだったんだ……」


 つまり、両親と拓斗くんの思いがすれ違ってしまってる状態だったということか。


「拓斗の墓の場所も突き止めた。隣の市の墓地だ。幸いにも明日は、月命日だよ」

「……あ! それなら明日お墓に行けば、拓斗くんのご両親に会える可能性が高いね」

「そうだ。とにかく、明日行ってみるしかないな」

「うん!」


 拓斗くんのご両親に出会えたところで、なんて説明したらいいかはわからない。だけど拓斗くんには、お父さんもお母さんも、お墓参りにちゃんと来ていたよと伝えることはできそうだ。

 そうすれば、少しは拓斗くんの気持ちが変わるかもしれない。