死んじゃってるんだけど、とあっけらかんと言う彼に心がずきりと痛む。しかし悲しそうな顔をしてはこの子が余計寂しくなる気がしたから、私は努めて笑顔を作った。


「うん、見えるよ。このお兄ちゃんは神様だからね。私はえっと……普通の人間なんだけど、ちょっと特別なの」


 本来なら、幽霊でも神やその従者の姿を見ることはできない。しかし今は、紫月の神通力によって、男の子に私たちを視認できるようにしていた。


「え! 神様!? すげー! 俺初めて見る!」

「そうだ、俺は神様だ。すごいだろう?」

「……子供相手に偉ぶらないの」


 すげーと言われたことが嬉しかったのか、紫月は得意げに鼻を膨らませる。彼って、神様なのにこういうところが妙に人間臭いよなあ。食いしん坊だし……。そこが素直でかわいらしく見えるけれど。


「それで少年。さっき我が神社に参拝しに来ただろう。その時の願いが気になってな」

「あ、さっきの神社の神様だったんだ……。ふーん」


 途端に表情を曇らせる男の子。私たちに願いごとを知られていることが、恥ずかしかったのかもしれない。


「両親に会いたいのか」


 紫月がそう尋ねると、男の子は私たちから目を逸らして、ぶっきらぼうにこう言った。


「まあ、会いたいけどさ。でも最近来てくれないんだよね。もう俺のことなんて忘れてるんじゃない?」


 投げやりな言葉だったけど、強がって言っているのがバレバレだった。唇が少しだけ震えている。

 悲しい虚勢を張っている彼に昔の自分を重ねてしまった私は、強い口調でこう言った。